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第2部 二章【あなた好みに切ってください】その1 第一話 ギャンブラー桐谷

Auteur: 彼方
last update Date de publication: 2026-03-21 13:55:30

28.

 ギャンブラー桐谷ススムは真面目で勉強熱心なプロの勝負師だ。

 ある日、彼の住む田舎町に新しい美容室がオープンした。そこにはとても可愛い人が働いており、桐谷は一目で惹かれていった。これは、ギャンブラー桐谷の一途な恋の物語――

二章 あなた好みに切ってください

~桐谷進の生き方~

その1

第一話 ギャンブラー桐谷

 鏡を見てふと思う。

(髪、伸びたなあ)

 おれは桐谷ススム。ギャンブラーだ。いつも乗るかそるかの博打を打ってその日暮らしの生活をしてる。性格は温厚でいたって真面目だと思うが仕事内容はギャンブルである。そんなばかなって? いるんだよ、そういう生き方の人間も。

 というより、真面目なやつにしかギャンブルのプロはつとまらないと言ってもいい。

 ギャンブルで暮らすには勉強熱心で自己管理能力にも長けている必要がある。そういった気質がない場合はギャンブラーなど破滅するだけだ、やらない方がいいだろう。ギャンブラーぶって大博打を好むような奴は普段は他の仕事してる人なんだよ。博打しかしてない奴はみんな真面目さ。

 ちなみに、おれの最も好む勝負は麻雀だ。それ程強いわけじゃないが、だからこそコイツだけはやめられない。

 去年はおれが日本で最も強い麻雀の打ち手だと思う賤機(しずはた)って奴と一緒にマカオ旅行に行ってみた。奴はやっぱり他のギャンブルも豪運で勝ってたっけな。それでもアイツは麻雀一筋で旅行から帰ったらもう仕事の麻雀しかしない生活に戻った。

 ギャンブルなんて全然やらないで、毎日好きな本を読んで、散歩して、勉強と運動をバランスよくやり、庭には野菜を植えて家庭菜園をしてる。そんな奴だから最強なんだろうな。おれも真面目な方だけど、そこまでは真似できねえよ。

 で、最近はどのギャンブルもあまり調子が出ないからギリギリまで節約してたらあまりにも髪が長くなってきてた。さすがにそろそろ切るか? 部屋ではカチューシャしてりゃいいけど外にそのまま出るのは抵抗がある。女顔だから余計にな。

「さすがに切り行くかあ……」そうぼそっと独り言を言うと玄関ポストにチラシが入ってるのに気付く。新しくオープンした美容室のチラシだった。

(駅の反対口から2分くらいのとこだな。ずっと貸店舗だったけど、あそこ美容室になったのか。1500円? まじかよ安っ!)

 いつも行く近所の床屋へ行くか、近所付き合いは大切だ。しかし値段は2000円。それよりも、新しくオープンした安い美容室へ行くか、ここだって近所と言えなくもないし。

 悩んだ時はコインで決める。

「表なら美容室」

 誰に向けて言うわけじゃないが口にすることで自分の決定を反故にできなくなる力が加わる気がする。おれはコインを投げる前に必ず決め事を口に出してから投げる主義だ。

 ピーーーン! 

 親指で10円玉を弾いた。天井近くまで跳ね上がる。

 パシッ! 

 キャッチした手を開く。

(平等院鳳凰堂か)つまり、表だ。

 おれは新しくオープンした『エクセレントヘアー』という美容室に行くことにした。

    

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